2015/12/13

[032] 顔かお金か(1)


「世の中はさあ、
旦那とね、顔とね、胸と、お金となんだ。
浅はかなのよ」

[よのなかはさあ
だんなとねかおとねむねとおかねとなんだ
あさはかなのよ]
(旧版:(206) 2011/1/8

有名回文
世の中ね、顔かお金かなのよ
の、性別を限定した改作ばーじょん。改作というか、改悪なんですが。

「世の中ね、顔かお金かなのよ」は、あまりにうまくできているために、かえってその回文としての出来の良さが伝わりにくいと思いますが、ゼロからこれが作れるかと言われると、私にはどうも無理っぽい感じです。回文を何か一つだけ選べと言われたら、今なら一周まわってこれと答えるかも。好きな小説を聞かれてベストセラー小説を答えるような恥ずかしさがあるけど。

誰がこれを作ったかは気になるところです。この回文、ネット上で情報を遡っていくと、椎名林檎のフリーペーパー『電脳RAT』第9号(1999年10月発行)内で取り上げられたのが初出らしい、少なくともネット上で有名になったのはそれがきっかけだ、ということが分かります。これよりも古い情報は今のところ見つかりません。ありがたいことにこのフリーペーパーはネット上で(部分的に?)復刻 されています。当の回文コーナーも読めます。ここ。ウェブサイトで回文を募集して、それをフリーペーパーで発表したようです。「顔かお金か」は「f-comさんの作品」とありますな。

このフリーペーパーになぜ回文コーナーがあるかというと、九州地方で1999年6月までに放送されていたラジオ番組「椎名林檎の悦楽巡回(パトロール)」内に回文投稿コーナー「回文の小径」があって、番組が終了したあとにそれを誌上で再現した、ということのようです。(以前は「顔かお金か」の初出はこのラジオ番組だとてっきり思い込んでいて、ブログ旧版にもそう書いてしまったのですが、おそらくそれは間違い。すいません。) 番組の様子は ここ などに文字起こししたものがあり(ファンの力って凄いなあ)なんとなく雰囲気は分かります。この回文コーナーは聞いてみたかった。上記フリーペーパーの第7号(1999年7月発行)に、コーナーでの優秀作品が並べてあり(ここ)、興味深いものがあります。でもこれを見るに、やっぱりちょっと古い感じがするのは、回文全体が徐々にでも前へ進んでいるということなのでありましょうね。

【次回予告】
「世の中ね、顔かお金かなのよ」は回文として何がそれほど出来が良いのか。それが明らかになるとき、回文の新たな地平が開けるのだ(という可能性もあるかもなのだ)。「顔かお金か(2)」次週公開。

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