2015/05/02

[004] ラジオと回文


ナンパってのは、利点以外なし。
「しかし、しない」が、インテリ派のテッパンな。

[なんぱってのは りてんいがいなし
しかししないがいんてりはのてっぱんな]

(初出:「手賀沼ジュンのウナンサッタリ・パンツ」2015/02/08)

新版開始早々、だいぶ間が空いてしまいすみません。その間、仕事したり勉強したり病気したり、ラジオ向けに回文を投稿したりしていました……

そうだ、ラジオ番組の回文コーナーに回文を投稿していたのです。昨年末、某回文イベントに遊びにいったときに、参加者の方々に教えられて始めたのですが、これが興味深い。選者が回文ソングで著名な手賀沼ジュン氏だということ、投稿者に猛者が多くて面白いということもありますが、投稿を通じて、回文についていろいろ考えさせられています。

このコーナーの素敵なところとして、毎回お題が与えられて、それを回文に組み込まねばならない、という点があります。お題は(たぶん)必ず名詞で、2文字か3文字です。回文をたくさん作っていると、「他人と違う回文を」という意識が働いて、長めな語やあまり一般的でない語からスタートしたり(「ユーレカ」からスタートした[003]はまさにそれ)、そもそも名詞や動詞などからスタートするのを避けたり([001]でも書きました)、といった工夫をしたくなりますが、このコーナーではそれが封じられて、全員が同じお題を前にして同じ土俵で作り始めることになります。このルールはフェアで気持ちがよいですし、他人の回文を聞くのも楽しくなります。ただこれだと、何も考えないで作ると他人と似たものになってしまいうるので、どうにか個性が出るように思案することになります。

安易に個性を出そうとすると、何か奇矯な回文を作りたくなるのですが、この回文コーナーでは単純にそうもいきません。ラジオという媒体の制約があって、声に出して読まれただけで理解できる回文を作る必要があります。ネットで回文を発表するときには、表記上の特殊効果に頼ることができますが、ラジオだとそれが不可能です。そもそも、そういう表記上の特殊効果が使われていない「普通の」回文であっても、耳で聞いただけで理解されるようなものは存外に作りにくい。このコーナーで自分の回文が採用されたのを耳で聞くと、作った本人なのに意味がすんなり分からない、ということが何度かあり、けっこう落ち込むのでした。こうした制約を乗り越えた上で、個性もあって、自分なりの美意識にも適うものを作ろうと頑張ってみるのですが、締切までの時間の制約もあるし、たいていどこかで妥協が生じて、なんだか毎回中途半端なものを投稿している気がします。(有名な「世の中ね、顔かお金かなのよ」は、初出はラジオだという説が有力です。普通に文字で見ても面白いこの回文ですが、改めて見てみると、その「ラジオ向け感」もすごいものだと思います。)

上記の回文は、お題が「ナンパ」だったときに投稿したもので、投稿したなかではとくに出来がよいと思っているものです。この回文の最大の工夫は、文章をカギカッコでくくることでそれを名詞化したところですが、残念ながらこのカギカッコのために、ラジオで読まれたときはやっぱり作った本人にも理解しにくかったのでした。なんともはや。

と、苦労もあるのですが、理解しやすい回文を作ろうと悩むのは、重要なことなように思います。ネットで発表する回文も、分かりやすいに越したことはないですし。「奇矯な回文」を作るときだって、アイディア一発勝負よりは、細かいところまで気を配って意図が通じるようにする努力を怠らぬほうがよいですな、と、旧版で出したしょーもない回文のいくつかを眺めながら歎じております。

4 件のコメント:

  1. 更新が止まってしまいちょっと心配はしていたのですがご病気のありましたか……ご自愛ください。
    そんな中でもtwのTLでウナパンの話題に罅ワレさんの名前を見かけていましたので、新作を拝見したいなとずっと思っておりました。皆さん絶賛していましたが、本作を見て納得です。というか見るまでもなく、ですが。
    「利点以外なくない?」がインテリ!?

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    1. どうもご心配おかけしました。病気は1週間程度だったので、更新停滞とは実はあんまり関係ないのです。次の記事で何を書くかしばらく考えていたら1か月くらい間が空いてしまって、更新のタイミングが分からなくなり、よし、ラジオでステッカーがもらえたら書くぞ、と決めたところ、これが一向にもらえなくて、とうとう5月になってしまったというわけですよ……。

      「インテリ←→利点」回文では、
        利点言うと「デメリットは?」と吊り目で問うインテリ(太田光彦作)
      の暗記が推奨されておりますよ。

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  2. こんばんは。ラジオでいつも罅ワレさんの回文楽しませて貰っています。
    そうかー。罅ワレさんも苦労したり楽しんだりしてるんですねー。私も同じです。
    最近はちょっと頑張り過ぎな様な気もしていて手を抜こうかななどとも考えていたのですが、またやる気になってきました。
    本頁の作品、「ナンパって」「テッパンな」の対応には私も思い至ったのですが、
    「ナンパってのは」と突き抜ける発想が私にはありませんでした。そこに一番感心しました。
    ガキカッコの所はラジオで聞いても意味が通じました。カギカッコがなくても特段問題ない様に思います。
    ちょっと難点と思った所を敢えて申し上げますと、「利点以外なし」の所、意味は通っているのですが、
    「利点以外ないってことは… ああ、いいこと尽くしってことかあ」とちょっと考える必要がありまして。
    そして「芋」の回文は心底感心しました。どうやって作ったんですかー!?

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    1. コメントありがとうございます。太田さんのでは、「桜」に特にいたく感心しましたよ。あれは手練れの回文だと思いました。
      標記の回文は、耳で聞いても通じる人には通じるようでよかったですが、そうですね、「利点以外なし」の二重否定もややこしいですよね。音だけだと余計に。
      「芋」お褒めくださりありがとうございます。あれは「よいいも……もいいよ」を思いついたのがすべてでしたね。実は細かい点で気に入っていないところもあって、本当はもうちょっとどうにかしたかったんですが。

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