「そう若くない……」おいおい泣くタニシら。
「老いたくない……」おいおい泣くタイ。
「オラ死にたくない……」おいおい泣くカワウソ。
[そうわかくない おいおいなくたにしら
おいたくない おいおいなくたい
おらしにたくない おいおいなくかわうそ]
(旧版:(198) 2009/11/17、修正)
悲哀の漂う
「そう若くない……」おいおい泣くタニシ。という回文は
「死にたくない……」おいおい泣くカワウソ。
- 「そう若くない……」おいおい泣くカワウソ。
- 「死にたくない……」おいおい泣くタニシ。
(もっと形式的に述べたほうがわかりやすい、という変わった方もいると思いますので、形式的定義をいちおう書いておくと、次のようになります。文字列Sの逆読みをS'で表します。文字列A, B, Xに対し、「AXA'」「BXB'」がいずれも回文になっているとします(このときX=X'が成り立ちます)。この2回文から、「AXB'、BXA'」という新たな回文を作ることができる、というのが島袋の原理です。)
もう少しひねった形の合成方法もあります。
「そう若くない……」おいおい泣くタイ。も回文ですが、これは
「老いたくない……」おいおい泣くカワウソ。
- 「そう若くない……」おいおい泣くカワウソ。
- 「老いたくない……」おいおい泣くタイ。
(これも形式的に書いておくと、次のとおりです。文字列A, B, X, Yに対し、「AXA'」は回文で、「YBXB'」という文は「Y」と「BXB'」に切り分けるとそれぞれ回文になっているとします。これらから、「AXB'、YBXA'」という新たな回文を作ることができる、ということです。Yの位置が後ろにある「AXA'」と「BXB'Y」の対でも同様です。)
私がこの原理を最初に意識したのは、kawahar氏(回文師)が自作の
くどい性転換鑑定制度費。ひどい性転換鑑定制度区。という回文について述べてるのを読んだときです。「島袋の原理」という名称は、私の友人むらさんが
島袋、八分増し。馬渕は、六分増し。という回文から一語をとって命名したものです。
この手法、構造に注目して回文を作る方法としてはかなりお手軽なもので(「構造」については[012]を参照)、実際、ほとんどの回文はこの手法で拡張することができます(出来を問わなければ、ですけど)。
- 竹藪焼けた → 竹藪焼くよ。よく藪焼けた。
- 素晴らしいシラバス → 素晴らしい栞。惜しいシラバス。
- 私負けましたわ → 私負けませんぜ。しかし前世負けましたわ。
作例もいろいろあります。有名な書籍から挙げれば
中崎屋の焼き肉、国木屋の焼き魚がまさに島袋の原理ですし、あるいは、やや変則的ながら
(まさに何様作、『さかさ言葉「回文」のすべて』)
品物も無く 炉にろくなものもなしも島袋の原理に依っていると見ることができます。
(土屋耕一作、『軽い機敏な仔猫何匹いるか』)
ネット上でも:
夜、鉄塔盗ってる日は、昼、鉄塔撮ってるよ
(カー・イーブン作(だったと思うけど、違ってたら教えて下さい)、『RENZABURO』連載「終わりは始まりII」)
たかり屋のやり口とチクり屋のやり方
(山田航作、YAMADA WATARU OFFICIAL SITE)
読めないのが蘇我入鹿、悪どく明るいのが蘇我稲目よ。ラジオ番組「手賀沼ジュンのウナンサッタリパンツ」回文コーナーでも、この手法による回文はときどき採用されています。
(みィ作、twitter)
罰呼ぶ欲深、福呼ぶ四葉
(ダックス作 ※採用された回文だと思っていたのですが、それは私の記憶違いでした。初出はtwitterです)
吸い合いたいから買いたい飴、舐め合いたいから買いたいアイス
(オハゲのO太郎作)
気合など無き春なら、さらなる覇気など無い秋。
(拙作。よいのが思いつかないときの島袋頼み)
手軽なだけに、使いどころはけっこう難しいとも言えますが、構造的回文があまり悩まず作れるのは素晴らしい。ちょうど意味が補い合うようにできたり、綺麗に対の構造をなすようにできたりすると楽しいです。未体験の方はぜひお試しくださいませ。
罅ワレ様
返信削除操子ママです。よろしくお願いいたします。
島袋の原理は単純ながら力強い発見ですわ!わたくしもぜひ適用して回文を作ってみたいと思います。表題の回文は「すごいわ!」と感動いたしました。 操子
操子ねえさんこんばんは! 先日はありがとうございました。
削除そして初コメントありがとうございます。島袋ぜひ使ってみてくださいませ。お手軽にして非常に強力です。
まさか私の回文を取り上げてくださるなんて…。恐縮です。
返信削除実は「罰呼ぶ欲深、福呼ぶ四葉」はウナンサッタリ・パンツでは没になった物でして。
twitterに書きこんだところ、O太郎さんを始めとしたベテラン回文師の皆さんから
思いもよらぬお褒めの言葉をいただいたという思い出深い回文です。
今よりも更に未熟だった頃に、(偶然にせよ)構造的な回文が作れてしまったわけで
島袋の原理、恐るべき有用性だと思います。
それにしても、罅ワレさんの回文にまで取り上げていただけるなんて
偶然舞いこんだ回文に、まさに福を呼んでもらった気持ちです。…罰が来ませんように。
あーたしかに採用はされていなかったかもしれません。twitterで見て印象深かったので、いつの間にか記憶が捏造されたようです。本文をちょっと修正することにしまする。ご指摘ありがとうございます。
削除今回みたいな記事をもっと書きたいなあと思ってます。自分の回文だけではなくて、ひとの回文を紹介して、それらの共通点を提示する、みたいなの。まだまだ能力と知識がなくてできないんですが。
出典がラジオのが1つだけだと、なんとなく弱いので、拙作を追加することにしました。ついでに、山田航さんのも追加しておきました。
削除×罅ワレさんの回文→〇罅ワレさんのブログ
返信削除の間違いです。すみません…。