2015/10/04

[023] 対句の構造


鮫釣り師は走りとか要らんが、
元来、蚊捕り師は走り詰めさ。

[さめづりしははしりとかいらんが
がんらいかとりしははしりづめさ]
(旧版:(144) 2008/10/20修正)

「鮫釣り師は走り詰めさ」という回文は、これはこれで完成していて悪くないと思うのですが、自分の好みからすると今一歩で、何か修正法がないかと試行錯誤していました。現段階での落ち着きどころが冒頭のものです。

「鮫釣り師は走り詰めさ」だけだと、「鮫釣り師」という言葉に突拍子がなく、何でもあり感がちょっとあります。前に書いた言葉で言えば、「完結性」に欠けます。解決策として、「鮫釣り師」と並列できそうな言葉を持ちだして、対句(パラレリズム)の構造を作った、というのが冒頭の回文です。「鮫釣り師は……、蚊捕り師は……」と、並列的な文章になっています。この手法は、単純で、ある意味安易なのですが、「なんか巧みな感じに見える」という効果はたしかにあると思います。「蚊捕り師」も、これだけなら「鮫釣り師」に負けず劣らず突拍子がない言葉だけれど、2語が同じ回文内で共存することで、何でもあり感が薄らいでいそう。

先に述べた「島袋の原理」([021])は、対句の構造をもつ回文をシステマティックに作る方法である、と見ることができます。……と書いて気がつきましたが、冒頭の回文も島袋の原理から作ったと見なせますね……
  • 鮫釣り師は走り詰めさ。
  • 元来蚊捕り師は走りとか要らんが。
の2回文から作ればよし。うーん、対句の例としてあんまりよくなかった……。

実際、島袋の原理を使わずに、対句の構造を盛り込むことはもちろんできます。あんまりうまくなくて恐縮なんですが、昨日の「手賀沼ジュンのウナンサッタリパンツ」回文コーナーに投稿したやつ
魚の眼茹でる孫、
真昼に耳煮る曾孫。
まるで夢の中さ。
などがそうです。これも、「魚の眼茹でるママ。まるで夢の中さ。」とかでも回文になっているのですが、いかにも「魚の眼茹でる」に突拍子がないので、対句的にしている次第。落ち着きはそこそこよくなると思います。対句構造をいっそう強化すると
夜間、魚の眼茹でる孫。
真昼に、猪の胃煮る曾孫。
まるで夢の中、惨禍や。
とかできると思うけど、やりすぎると汚くなりますので、用法用量に気をつけましょう。

2 件のコメント:

  1. お久しぶりです。
    噂ではラジオの回文コーナーのレベルを上げ倒していらっしゃるようでなによりです。
    対句は魔物ですね。私などは思いついたら軽い高揚感に浸ってしまいます。(ドヤ感っていうんでしょうね笑)
    この対句構造の間にウナンサッタリパンツのお題の回文を挟み込んだりするとまた違う雰囲気になって楽しいだろうと作ってみましたが、技巧性が薄れインパクトに欠けたかもしれません…


     鮫釣り師は走り過ぎ魚の眼茹で、
     夢の中、詐欺スリ師は走り詰めさ。

    さめづりしははしりすぎさかなのめゆで
    ゆめのなかさぎすりしははしりづめさ

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    1. こんばんはー。みィさんからのコメント嬉しいなあ。
      ラジオは、ここ2週のレベルの急上昇ぶりに、あと3倍くらい頑張らなくてはと思っておりまする。そういえば、だいぶ昔のだけど、スガシカオのやつがとても好きなのです。

      「対句は魔物」、まさにそうですね。使うとときどき物凄いものができるし、ドヤ感夥しいんですが、使いやすさには自覚が必要ですね。
      そして詐欺スリ師! 出来の良い島袋を無言で組み込んでいるあたりに、らしさを感じますよ。魚の眼、入れてみました。無理やり感。

       なんてえ雨の中、鮫釣り師は走り過ぎ、魚の眼茹でとんねん、と。
       で、夢の中、詐欺スリ師は走り詰め、魚の眼和えてんな。
       [なんてえあめのなか さめづりしははしりすぎ さかなのめゆでとんねんと
       で ゆめのなか さぎすりしははしりづめ さかなのめあえてんな]

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