2015/10/12

[024] 構造について


寿司とる。すると太る。すると死す。

[すしとる するとふとる するとしす]
(初出:「手賀沼ジュンのウナンサッタリパンツ」2015/6/28)

このところ、回文における「構造」の重要さをひしひしと感じております。構造については[012]でいちおう書いたのですが、構造の例としてかなり特殊なものを持ちだしていて、こりゃ分かりにくいと思いました。そこで再度、構造について書いてみます。分かりやすさは保証できませんけど……。

回文が作られるプロセスを考えましょう。回文作成のプロセスには、大雑把に言えば
  1. 《文法と語彙(Syntax & Lexicon》
  2. 《意味(Semantics)》
  3. 《構造(Structure)》
の三要素があると考えられており、頭文字をとって「3S」と呼ばれています……と定説のように言っていますが、すいません私が最近でっち上げました。回文を作る途中経過は、この三要素のどれかでおおよそ説明がつくのではないか、という話です。(語彙と文法を一言で表す言葉はあるのだろうか……。言語学方面のひとのアドバイス求む。)

たとえば、「ひとりじめ」という言葉が入った回文を作ろうとした場合を考えましょう。ひっくり返すと「めじりとひ」で、これだと日本語になっていないのですが、「めじりと、ひ……」と分割して後ろに何かくっつければ日本語になりそう。これは《文法と語彙》が手がかりになって先に進んだケースです。この段階で「めじりと、ひ……ひとりじめ」の真ん中を補えば回文ができそうなのですが、現状だと「ひ」が余っていて、これを伸ばさないといけません。《文法と語彙》的に言えば、「ひ」で始まる名詞ならまあ何でもよさそうで、「ひも」「ひでり」「ひとかげ」とかいろいろあるわけですが、「めじり」と並ぶことを考えると、《意味》的には「ひとみ」とかがよさそう。これで余った部分がなくなって、「目尻と瞳と、ひとりじめ。」という回文ができました([002]参照)。

という具合に、《文法と語彙》と《意味》を行き来しながら、種となる部分を引き伸ばしていくが回文の基本的な作り方ですが、そのいずれでもなさそうなプロセスがあります。たとえば前回挙げた回文
魚の眼茹でる孫、
真昼に耳煮る曾孫。
まるで夢の中さ。
は、「夢」からスタートして、まず《文法と語彙》と《意味》を手がかりに、「魚の眼茹でるま……まるで夢の中さ」というところまで作りました。その段階で、そうだ、「魚の眼茹でる○○」という句と対になるような句を直後に置くことにしよう、と考えて、上記の形に至っています。この「対句にする」という発想は、《文法と語彙》について考えているのでもなければ、文の《意味》を考えているのとも違います。広い視野で、回文全体がどういう《構造》になっているかを決めているのだ、と考えることができます。

この3つめの要素《構造》は、これまでも陰に陽に取り上げてきました。汎用性がありそうなものを並べれば
などはいずれも《構造》の例です。[012]で取り上げたような、特殊な、使い回しの利かない構造もあります。

これらの回文は、作成のどこかの段階で、「こういう構造にしよう」と思い立たないと出来上がりにくそうです。七五調の回文を考えれば分かりやすいと思います。「五七五七七」などの構造を想定しておかないと、偶然そうはなりにくいでしょう。まだ見ぬ回文に至る足がかりとして、《構造》はきわめて重要だと思います。

なお、《文法と語彙》《意味》《構造》の3カテゴリは仮のもので、現に、自分が回文を作るプロセスのなかには、3つのうちのどれに入れていいかよくわからないものも実はあります。目下考察中。回文作成プロセスについては、他にもいろいろ考えている人がいそうだから、何か教えてほしい。

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