2015/07/19

[013] 長い回文


いかん参戦関与、ダメだ! ダメだ! ダメだ! ダメだ! ……
ダメだ! ダメだ!(4,0000,0000,0000,0000,0000,0000,0000,0000,1003回)

[いかんさんせんかんよ だめだ だめだ だめだ だめだ ……
だめだ だめだ よんかんせんさんかい]
(旧版:(89) 2008/4/10改作)

就職活動をしておりました際、某社に送った履歴書の特技の欄に、何を思ったか「回文」と書いてみたことがありました。一次面接で面接官がそこに食いついてくださって、
「回文が特技とありますが、どのくらい長い回文を作られるのですか?」
「長さはあまり重要視していません。日本語として自然なものが作りたいのです」
みたいなやりとりをしました。回文への情熱が伝わったためか、その面接はめでたく通りました。(二次面接で落ちたけど。) 皆さんもぜひ履歴書の特技欄に「回文」と書いてみましょう。

こうして就職面接で尋ねられることがあるくらい、回文は長いほどすごいという考えはけっこう一般的で、日本語で最長の回文は何か、という話題もよく目にします。

ただ、実際に回文を作る人はおそらくみな認識しているように、回文を単に長くするだけなら何も難しくなくて、いくらでも長くすることができます。上記の回文は、12,0000,0000,0000,0000,0000,0000,0000,0000,3029字です。回文は長さよりもやはり質ですね。むしろ短いほうがいい場合もありますですね……

というありがちな流れの文章を最初は書くつもりだったのですが、あれこれ考えているうちに、長い回文には、それにはそれでまた別の面白さがあるのだと思い始めました。1000字を超えるような長い回文だと、日本語の自然さや意味の分かりやすさを徹底するのは困難で、通常の回文の良し悪しからするとイマイチなものばかり、ということになってしまいそうです。が、長い回文だと、その長さゆえに、短い回文ではやりにくいことができるように思います。

たとえば、長い回文としてネット上のあちこちでコピペされている、「噛んで「イテッ!」リップ」で始まるものがあります。作者不詳。読んだことない方は検索してみてください。内容は、全体のファンタジー小説風のトーンは伝わってくるものの、何が起こっているのかはよくわからないのですが、そのよくわからない文章に、回文作者の独白が混じっていることはよくわかります。「ここで半分」とか「またやり直し」とか。オチも作者の独白になっています。こういう工夫は、短い回文でやると伝わらなそうで、長いからこそ成立するように思います。(ところで、この回文の字数は、ネット上だと1195字という情報と1197字という情報があるのですが、私が数えたら1198字でした。何度数えてもそうなるんですが、何か数え方が間違ってるのかしらん……長音を無視する場合の字数の数え方の問題かもしれない。どなたかカウントしてみてください。)

ユンブイカさんの これ は、1551字の、新婚万歳な二人の反戦派な回文なのですが、やっぱり細部はよくわからないです。ですが、さすがユンブイカさんで、よくわからないなりに面白いです。俳句を詠んだりラトビア国歌を歌わされたりしてます。「スイスー、スイース! スイス、いい国家」の反対側が「すいすすーいすーすいす、と犬かき」だったりします。こういう遊びは、短い回文でやるにはやっぱり苦しくて、いろいろ話題が移り変わる長い回文だからアリなんじゃなかろうかと。

そのうち何か思いついたら、1000字越えの回文も作ってみたい、と思ったり思わなかったりした穏やかな初夏の休日。


なお、延々同じフレーズを繰り返すのではない回文で、私が知っている最長のものは、福田尚代さんの回文集『瀕死の神秘』所収の、「月世界」と題された6292字の回文です。ネット上ではぜんぜん情報が見つからないですが。最長を目指す方は、ぜひこれを越えていただけたらと思いまするよ。

4 件のコメント:

  1. 「噛んで「イテッ!」リップ」の回文、何であちこちでコピペされているのか不思議だなあと思っています。
    それにしてもわざわざ文字数を数えるとはおヒマですね……。私もヒマなので数えてみました。その結果1189字。
    「シーフ」「ハーレム」「シーフ」「ダメージ」の他に「勇者(ゆーしゃ)」「封じ(ふーじ)」「魔道(まどー)」の読みも長音符として扱い、無視して良いルールのようです。
    回文チェッカー使わせて貰いました。
    それにしても「回文が趣味です」というと「一番長い回文って何文字なの?」と良く聞かれます。「何文字です」って言って期待に応えて上げたいんですけどねえ。

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    1. お暇なところ、字数確認どうもありがとうございます。1189字なら、たぶん私が数えた1198字と実質的に同じだと思います。長音無視をしているところが9箇所あり(勇者、シーフ、ハーレム、あー、シーフ、うー、ダメージ、封じ、魔道)、それをカウントするかしないかの差だと思われます。やっぱり無視する長音は字数にカウントしないほうが自然かなあ。
      いずれにせよ、ネット上に出回っている字数情報はどうやら間違いっぽいですね。暇にまかせて数えてよかった。数えるために、濁音・拗促音・長音に対応する回文チェッカーを作ったりしてました。長音をどう処理するかでまだ悩んでおり、公開するには至りませんが。
      「噛んで「イテッ!」リップ」は、推測するに、長さを追求した回文としては、ネット上に現れた最初のもので、それでこれだけ広まったのかなと。全体の雰囲気の統一という点でそれなりに成功しているとは思いますし。残念ながら意味はいまいち分かりませんが。

      > 「一番長い回文って何文字なの?」
      は、どう答えるべきなんですかねえ。長いだけならどうとでもできる、ということを伝えたうえで、出来のいい長めな回文を教えてあげればよいだろうか。その場合、教えるべき回文は何だろうか。ふーむ。

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    2. よい機会なので、回文チェッカーを修正しました。おそらく拗促音・濁音などに対応しているはず。字数もわかるようにしました。
      長音はよくわからないから未対応。

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  2. ふざけんな

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